国際食糧農業機関(FAO)は、伝統農法や農耕文化を継承する知恵を共有し、地域の持続的な発展を考える「世界農業遺産国際会議」を2013年5月29日に石川県七尾市で開幕し、「静岡の茶草場(ちゃぐさば)農法」などが新たな農業遺産に認定されました。
- 世界農業遺産とは、国際連合の食糧農業機関(FAO)が始めた登録制度です。
- 当初は、発展途上国の農業を紹介し、地域を発展させるための制度として発効しました。
- 現在は、世界の重要な農業を後世へと残すための登録として転換しました。
- 2013.1.18現在、世界で19地域が登録されています。
- 日本では、佐渡と能登の2地域が世界農業遺産登録されています。
- 世界農業遺産は、農薬の適正使用や、農地転用を制限するものではありません。
- 自然を守るために何らかの活動義務を課すものでもありません。
- 国際連合から、支援や補助があるわけでもありません。
- 究極的には、名前だけの制度と言えるかもしれません。しかし、世界農業遺産の名前を使って、地域産物をブランド化したり、観光資源を活性化させて、地域外からの集客を図ったりといった活用法が考えられます。
これからも継承していく農業活動や地域活動の中で、それぞれが有益性を見出して、利用していくことが可能です。
※よく似た名前の登録制度に、「世界遺産」があります。こちらは、国連の教育科学文化機関(UNESCO)が発効した制度で、登録された文化や自然を守るため、厳しい制約が課せられます。
茶草場農法(ちゃぐさばのうほう)とは、茶園周辺で刈り取った雑木・雑草を、茶畑に有機肥料として投入する農法です。
この投入する草木を刈り取る採草地を、茶草場と言います。
かつては、日本全国で見られたこの茶草場農法ですが、生産方法の変化や時代の変化にともなって、現在では、静岡県と鹿児島県でのみで、行われています。その中でも、静岡県のお茶農家さんは、この農法を行うことでお茶の品質が向上すると信じて、伝統的に行ってきました。
そして、この伝統的に継続されてきた茶草場農法が、茶草場を貴重な生物(キキョウ等の植物や、羽のないバッタ(カケガワフキバッタ)等の動物)が住む特別な場所と変えていったのです。
良いお茶を作ろうとする農家の営み・努力と生物多様性の確保が両立しているこの地域は、世界的にも非常に珍しい事例です。
※国連大学制作の「UNU Channel」から転載させていただきました。
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